qwertyと上手く付き合う

さてアドカレ2回目です。アドカレって一人で何回もやるものなのか? って思ったんですが、調べた感じ問題なさそうなので問題ないということにしようと思います。それよりも日程が埋まらない方が問題です。

さて 前回の記事では交互打鍵が最速とは限らないという話をしました。ずいぶんと反響をいただきまして、放火魔として絶賛活動中の僕としてはありがたい限りです。では今回はそれを踏まえて、qwertyをどう扱うかについて考えていきます。わざわざ考えて「いきます」と書いたのは、記事を書き始めた段階で何も考えていなかったからです。

 

ところで今回の記事は箇条書き、というよりは見出しというものを使います。前回の記事は文字一列で大変読みにくかったわけですが、何せあの記事は本論ではなく序論、いわば転生モノにおける主人公がトラックに轢かれて神様とご対面するような場面でしかないためです。

 

qwertyを使うメリットとデメリット

qwertyローマ字入力の手法として用いる最大にして唯一のメリットは日本の、ひいては世界のデファクトスタンダードである点です。デメリットは必ずしもローマ字入力法として最適化されていない点ですが、デファクトスタンダードであるというメリットは、裏を返せば使える環境が限られるという強烈なデメリットをqwerty以外の配列に負わせることができるわけです。結局のところ僕は外でも使える高速打鍵配列というものから離れられないだけなのかもしれません。

もちろん真の意味で最速を目指すならば入力メソッドの最適化をした方が良いのです。しかし例えばREALFORCE TYPING CHAMPIONSHIPではWeather Typingに標準で対応されている配列の使用しか認められていませんし(配列ファイル持ち込みの場合は不明)、TypeWellにおいてもAZIK-tomoemon配列のtomoemonさんがAZ枠として隔離されているなど微妙に制限を受けたりします(AZIK-tomoemon配列は打鍵数が少なくなる配列なので当然と言えば当然ですが)。その辺を受け入れられるかどうかというところだと思います。まあ最近は制限もあんまりない気もしますが、どうでしょう。

 

・「あいうえお」よりも速い5文字

「あああああ」よりも「あいうえお」の方が速く打てる、というのはタイピングマエストロ隅野貴裕さんがよく使うフレーズです。すなわち、同じキーを連打するよりも、別のキーを押したほうが速いというものですね。

タイパーの皆さんはこれに同意すると思いますが、一方で通信教室や説明会など見ていると、タイピング初心者の方はどうも納得いかないようです。彼らの中では同じキーを連打したほうが脳死でできるので次のキーを探す必要がないので速いのです。これは前回の記事の交互打鍵と同手連続のコスト見積りと同じ原理です。

ところで母音のみからなる5文字でも、並び替えれば「あいうえお」よりも速く打てる5文字というのは当然見つかると思います。ではどんな5文字が最速になるのか、答えの一つとして考えられるのが「あえういお」です。左から順にジャってやって終わりです。0.1秒もかからないと思います。あるいは好みによって「ういおうい」とか「ういえうい」とか「おいうあえ」とかいろいろ考えられると思いますが、ここに直観的に「おういえあ」を挙げる人はほぼいないと思います。

他の答えとの違いは、「おういえあ」自体がoh yeahっぽくて面白いというのもありますが、いやないですが、他の答えが「右から左」あるいは「左から右」という流れに従って押せばいいのに対して、「おうい」はそうなっていないためです。流れが一方向に定まっている場合、最悪指3本を固定したまま手首を軽くひねれば順番に打つことができます。そうなっていないものは押す順番を考える必要があり、その分減速が挟まるとされています(実際には指の長さや形も効いてくるので難しいところで、少なくとも僕は「おういえあ」のほうが速く打てます、直観的にとつけたのはこのためです)。

このように一方向に順に押せるような連続打鍵を、一部界隈はアルペジオ打鍵と呼んで崇拝しており、qwertyキーボードを90度回転させればアルペジオ打鍵の割合が高くなる!と意味不明な主張が盛り上がったこともありました。個人的にはアルペジオという呼称はあまり好きではなく、なぜなら高速域においては実際にはほぼ同時に処理されることがほとんどなので分散性に伴う芸術的効果が少なくどちらかと言えばズレ打鍵に近いためです。とはいえズレ打鍵と呼んでしまうと今度は対象が広すぎて話にならず、ほかにいい呼び方も思いつかないのでアルペジオ打鍵と呼ぶことにしています。

 

・同手連続の分類

さてアルペジオ打鍵という名前を使うことにするとして、じゃあ「おうい」型をどうしようという話ですが、なんとなく流れが折り返ってる感じがするので、折り返し打鍵この記事内では呼称することにします

これとは別に、「樹木希林」のように同じ指での打鍵が連続する同指連続や「あああああ」のように同じキーを連続させる同鍵連続もあります。一般的には打ちやすさはアルペジオ打鍵>折り返し打鍵>同指連続=同鍵連続みたいな感じだとされています。まあどんなワードも基本的にはこの4つのどれかに分類されるものと思ってください。

公共広告機構」は右手だけで打てる長いワードとして有名ですが、音節で分解すると

kou: 折り返し打鍵

kyou: 折り返し打鍵

kou: 折り返し打鍵

ko: アルペジオ打鍵

ku: アルペジオ打鍵

ki: 同指連続

kou: 折り返し打鍵

と各要素に分解できます。もちろんどこで分解するかによって要素は変わりまして、分かりやすいところでは最後のkikouについてはk ik ouと分解すると単押し→同指連続→アルペジオ打鍵となります。

このように、分解する場所(=チャンク)を変更することによって文字列に対する意識が微妙に変わってくるのですが、これを利用して打鍵を加速する裏技もあります。詳しくは次回説明します。

 

・同手連続の分類から見たqwerty配列

さて上のように同手連続を分類してみましたが、実際qwerty配列ではそれぞれどんな感じになっているのか1(or2)文字に限って調べてみると、片手で打てる文字(母音除く、ca・jiを含む)35文字+拗音13種のうち

アルペジオ打鍵: 27文字+拗音2種

折り返し打鍵: 拗音2種

同指連続: 7文字+拗音9種

同鍵連続: 1文字

と抜け漏れはあるかもしれませんが意外に悪くなさそうに見えます。折り返し打鍵になるのは3打鍵以上の拗音のみなので少ないのは当然です。

実際は、促音(出現率2%)全部に同鍵連続が含まれる上に、ゅに同指連続(出現率1%)が含まれている、文字を跨いだ折り返し打鍵や同指連続が頻出するのでこれほど打ちやすくはありません。ていうか実際打ってるとtarとか(右手領域)ouのような折り返し打鍵が多すぎてほとんど折り返しに感じるくらいです。まあつまりこんなの無駄な統計です無駄な統計です。大事なことなので2回言いました。考えるだけ無駄でした。

しかし文字単位で見てさえも同指連続が16種となかなか多いというのは困りものです。しかもそれが出現率の高い「き(2.5%)」やら「ゅ(1%)」やらを含んでいるので余計にです。というか片手だけで打てないものを含んでも拗音(計3.5%)には同指連続を含むものが多いです。つまりyの位置が悪いというわけです。

つまり、ガッチガチの標準運指で戦うqwertyは非効率な要素も含むということになります。もちろんテルさんのように圧倒的な指の運動性で完全標準運指であっても高速を保てるタイパーもいます。どれだけ同指連続が多いと言っても10%にも満たないですし、そこの減速を最低限にしつつ他で十分な速度を保てれば頂点に立てるということです。

 

・というわけで

最適化というのは上のqwertyの問題点を解消する一つの答えとなっています。もともと最適化というものは同指連続をアルペジオ打鍵か折り返し打鍵に変えてしまうことを狙っているわけです。

ところで2017年のタイピングサミットでは最適化した時の加速率は10~20%程度という話をしました。そして脳の処理増大による減速よりもこの加速のほうが大きいと考えられるならば最適化しようと結論付けています。

そう考えると、qwertyを基本にアルペジオ打鍵の割合を増やすようにした配列を作ってガチ標準qwertyから乗り換えたとして、その時の加速率も10~20%程度に落ち着く……ような気がしないまでもないです。我ながら強引すぎると思います。

そして僕はガンガン最適化を取り入れている派閥に属します。これは、qwertyデファクトスタンダードであるという点を除いても、qwertyに不利な要素は少ないのではないかと考える一つの理由になっているのは間違いないです。まあ脳の負担が増大することによる減速も馬鹿にはできないですし脳死で効率的にバチバチできる配列があるならそれに越したことは無いですけど。

ともあれ、この最適化による弱点克服についてが次回の論題になります。kiは7→8とかdeは3→2みたいな基本的な最適化は書くつもりがなくて(個別に書いているときりがありません)、もっと別の切り口からの最適化について書こうかと思います。ちゃんと公開に間に合えばまた次回お会いしましょう。

 

ちなみにこの記事、本論のはずなのにトラック転生よりも文字数が少ないです。