雅致とは何だったのか

DOUBLE PRETENDERSで主催 (paraph) の偽装をしようとすると、どうしても雅致という存在と向き合わなければなりません。一方で、雅致という概念の解釈は人によってバラバラで統一されていないところがありますので、今回は (あくまで) 自分がどういう考えで雅致譜面に取り組んできたか簡単に紹介しようと思います。

雅致のバナーは毎回やる気の入り方が凄いですね。実はGachi EXTREMEを出せていない理由の8割位はバナーが思いつかないからです。

0. ガチ踏みの概念が自分の手になかった時代

ガチ踏み (譜面傾向) という概念を最初にITG界隈に持ち込んだのはいつものkaiさんです。

元々は発狂BMS界隈で使われていた言葉 (という認識) ですが、かいつまんで説明すれば

1) 縦連を含まない16分乱打譜面であれば、それぞれの指は速くて8分間隔でしか指が上下しないところ

2) 大量に縦連を含む譜面では16分間隔で指を上下させないといけないので

3) 縦連ではなく超高速8分同時譜面のような認識で「当たり前のように」縦連を押せるようになり

4) ついでにその譜面の倍のBPMの16分乱打が押せるようになる

ような感じで圧倒的成長を目指すようなものと思っています。BPM148のガチ押し譜面を押せればBPM296のTuriiだって押せるみたいな感じです。密度的にも指の速度的にも一緒ですからね。

この文脈を足にそのまま持ってくれば、

1) 縦連を含まない16分ストリーム譜面であれば、それぞれの足は8分間隔でしか動かないところ

2) 大量に縦連・スライドを含む譜面では16分間隔で足を動かさないといけないので

3) 超高速8分同時譜面のような認識で「当たり前のように」縦連・スライドを踏めるようになり

4) ついでにその譜面の倍のBPMの16分ストリームが踏めるようになる

という話になります。上のallegrettoのようにシングル譜面であれば二枚抜きで足の位置を固定してしまえるので、プレイ感覚はかなりBMSに近い感じになる反面、足を動かす必要がないので4)には繋がりにくいです。

 

1. Gachibumi Double Steps作成以前

ところで自分の作ってきた雅致譜面は全然関係ないところから始まっています。それがCyberangel DX17です。

2020年の4月というかなり早い段階で作ってしまったオーパーツです。自分の知る限り、PIUで言うD24以上に匹敵する程の複雑な二枚抜き譜面っていうのはこの界隈にはこれ以前には存在してなかったと思います。そもそもこの譜面で17という高難易度の譜面を作る理由は一切なく、二枚抜き譜面を作ろうと思って作ったわけでは無いんですが、文脈とかそういう奴で17の譜面を作らざるを得なくなったときにこのBPM帯でそこまでの難易度に引き上げるための手段としてこのスタイルを爆誕させなければならなかったというのが背景です。

特にLN地帯は相当難産だったんですが、一方で (理論上でも踏めるかどうか) めちゃくちゃ見直しながら譜面を作っていたせいで、完成した頃にはこの譜面はもしかしてクリアできるのでは・・・?という謎の勘違いがそこにありました。あるあるですね。

とは言え芥川龍之介の河童DH16さえクリアできてなかった頃の自分ではとてもじゃないですがクリア不可能だったので、一時の気の迷いで二枚抜きを練習する譜面を大量生産することになります。

 

2. Gachibumi Double Steps爆誕

Cyberangel DX17の難しいところは以下の3点に集約されていることは、rate0.8でさえクリアできなかった頃から気付いていました。すなわち

1. 大量の長押しとズレによる認識難

2. 足の移動量が大きい二枚抜きの頻出

3. 当然のように混ざる縦連・スライド・3つ押し

ということになります。この内、1に関してはCyberangelをプレイし続ければそのうち覚えるので問題になりません。また、2.に関してはとにかく2枚抜き譜面を大量にプレイして、当然のように2枚抜きが踏めるようになれば解決します。3.については上で述べた本来のガチ踏みの概念そのままですね。というか、3.の練習の過程で当然のようにBPM250の8分同時が処理できるようになれば3.の問題も解決しそうです。

つまり、本来のガチ踏み譜面の意識を持った譜面を大量に作って練習していけばCyberangelもクリアできる、そういう目的で作成されたのが初代Gachibumi Double Stepsということになります。

そういう事もあって、初代Gachibumi Double Stepsにはスライドや縦連、唐突な3つ同時を含むような滝が数多く登場します。また、低難易度譜面でのスコア・ミス数詰めを意図的に行うことで2枚抜きを意識せずとも踏めるようになる努力をしていました。

頑張った甲斐もあってGachibumi Double Stepsを作り始めた2週間後くらいには罪の天使 DX16を突然クリアしてしまうくらいには上手くなりました。最初はBabeL ~ Grand Story ~ DX14さえ怪しかったので相当な成長だと思います。

そのままの勢いでCyberangel DX17までクリアできてしまえば万事解決だったんですが、残念ながら1本目のLN発狂さえ抜けられないまま半年くらいは詰まり続けてました。理由は簡単で、Gachibumi Double Stepsの高難易度譜面がどれも気が狂っていた傾向がバラバラな上に理不尽な難しさがあり練習として詰めるのに向いていなかったこと、にも関わらず日和ったせいで足の配置がどれも踏みやすく根本的な殺意が欠けていたことです*1

 

3. Gachi 2ndへの派生

結局のところ、Gachibumi Double Stepsで得られる能力は「簡単な2枚抜きを、2枚抜きと意識した上で確実に入れる能力」と「Unleashed World、ハニエルのうた、Sign Mellow、L9をとりあえず生き残る能力」だけで、もっとも重要な要素である高難易度譜面に当然のように混ざる2枚抜きの練習にならない構造になってしまっていました。

というわけで、低難易度から高難易度までを均質的に似たような譜面で埋め尽くし、なおかつ配置に余計な手心が加わっていないパッケージを目指したのがGachi 2ndです。5日間で33譜面とかいう意味不明なスケジュールで作成したのでかなりシステマチックな譜面群になったと思います。Hail the Queen DX15とかその象徴ですね。

初代Gachibumi Double Stepsに足りなかった、高難易度譜面に当然のように混ざる2枚抜きの練習のみを目的にしているので、縦連やスライドのような要素を極力減らして素直な2枚抜き譜面が大多数を占めているのが決定的な違いです。つまりGachi 2ndの譜面は本来のガチ踏みの意識からズレた譜面内容になっています。タイトルがGachibumiではなくGachiになったのも、本来のガチ踏みの意識ではなく雅致という意識で作られたことを意味しています。

上の画像の4列が全部違う曲の譜面とかGachibumi Double Stepsの頃ではちょっと考えられないですね。左からDragon Hunt DH12、Sakura Samsara DH12、A-310 DX14、Battle of Schicksal DX15です。見た目は違いますがArc Stalker DX13とかStygian Nymph DX12とかもほとんど同じ動きをします。とにかく高難易度譜面に詰める価値が出たというのが大きかったです。

実際Gachi 2ndの効果は絶大で、雅致シリーズ以外の2枚抜き譜面がだいたい簡単に思えるくらいには総合的に上手くなれたと思います。Taste of Home ver. Englishとか2021年おめでとう!とかもクリアできましたしね。Gachi 2ndの調子が良かった日に選んでみたらついでみたいな感じでCyberangel DX17もクリアできました。Gachi 2ndを出してから1ヶ月位です。

 

4. Gachi EXTREMEとかいう遺作

ところでGachi 2ndを出した直後はまだCyberangelはクリアできないと思ってました。一方でGachi 2ndは全難易度を埋め尽くそうとした都合上、高難易度譜面の数がやや少ないという不満点も無くはなかったので、難易度15以上の譜面だけを大量に収録したGachi EXTREMEを作ろうと思っていました。

とか言ってたら1ヶ月位でCyberangelが埋まってしまって完全に目標を失い、というか雅致シリーズの未クリアがiRELLiA DX19とBefall DX18だけとかいう修羅の世界になってしまった上にITGが撤去されたのでモチベーションを失い、今も少しずつ作り続けてはいますがめちゃくちゃにペースが落ちています。

Gachi EXTREMEは元譜面の思想を継いで高難易度化しているだけなので、Gachibumi Double StepsとGachi 2ndの思想が混在しています。例えばStarfire Sonorant DX19は完全にGachi 2ndの譜面ですが、BabeL ~ Grand Story ~ DX19は完全にGachibumi Double Stepsの譜面ですね。

思想を受け継ぎすぎた。

 

5. 結局雅致とは何だったのか

Cyberangel DX17をクリアするために作成された練習譜面です。なので2枚抜きが入っていれば雅致とか、2枚抜きが入っていないから雅致じゃないとか別にそういう訳じゃないんですよね。具体的にはDOUBLE PRETENDERS 4に出したPristine Realm DX16なんかは大量に2枚抜きが混ざっていますが、別にこんなの練習してもCyberangelはクリアできないので雅致譜面ではないと自分では思っています。実際DP4の解説記事でも雅致という単語は使わずに「2枚抜き譜面」って表現していますしね。

一方でガチ踏み譜面というのはGachibumi Double Stepsに見られるように超高速8分譜面のように処理することを念頭に置いた譜面です。なのでPristine Realm DX16はやっぱりガチ踏み譜面でもないんですね。

 

自分がCyberangelをクリアしてしまった今、雅致という概念は完全に崩壊しています。強いて挙げるなら雅致シリーズの意思を強く受け継いだ譜面は雅致と呼ぶにふさわしいかもしれませんが、それは本来あったガチ踏みや雅致とはまた異なる精神性を持っています。

簡単に言えばCyberangelクリア以降に作成された/これから作成する譜面は「2枚抜きを練習する」譜面ではなくて「2枚抜きを楽しむ」譜面ということですね。じゃあなんて呼べばいいんだという話なんですが、「青いバラ」みたいに本来とは異なる意味を持った単語として雅致を使っていっても実用上は問題ないのかもしれません。

*1:Gachibumi Double Stepsには「元ネタ」が存在する譜面が多く、それを足に翻訳する過程で配置を丁寧に作り込んでしまったためだと思います